日本社会福祉教育学会 第20回大会
2024年9月7・8日、八王子市学園都市センターおよび創価大学・中央教育棟にて日本社会福祉教育学会第20回大会「SDGsと社会福祉教育」(創価大学・日本社会事業大学の共催)が開催されました。また、本大会を八王子駅前会場にした理由は、地域住民の方にも参加していただき、本学会とその活動を広く周知していくことを目的としております。
大会1日目は、炭谷茂氏(恩賜財団済生会 理事長)をお招きして、基調講演「SDGsの実現に必要な社会福祉教育とは~環境福祉学の視点から~」と題し、SDGsの歴史的理解から日本のSDGsの取組みの現状、社会福祉がSDGsの取組みで何に目を向け、留意すべきなのかなどについて触れていただけました。そして最後に、どのようなことを中核におきながら実践活動を行うことが大切となるのかについてお話いただけました。
その後、開催校企画ワークショップにおいて、「地域課題解決型の教育活動の八王子における取り組み~循環する地域参加と学び~」をテーマにコーディネーターを西川ハンナ会員(創価大学文学部人間学科 准教授)、シンポジストを伊藤 貴雄氏(創価大学文学部人間学科 教授)、野村 佐智代氏(創価大学経営学部 教授)、丸田 晋策氏(創価大学理工学部共生創造理工学科 教授、創価大学大学院理工学研究科生命理学専攻 教授)、コメンテーターを炭谷茂氏(恩賜財団済生会 理事長)のもと開催されました。
シンポジウムでは、創価大学にて取組む地域課題に取り組む教員の方々の活動等をご紹介いただき、地域課題解決や地域参加へのあり方を検討する機会となりました。
大会2日目は、学会企画シンポジウムとして「メゾ及びマクロ・レベルの力量を身につけるための循環型教育〜ソーシャルワーク実習における学校と実習先の協働に焦点を当てて〜」と題し、モデレーターを小山 隆会員(同志社大学)、コーディネーターをVirág Viktor(ヴィラーグ ヴィクトル)会員(日本社会事業大学)のもと、開催されました。
本シンポジウムのシンポジスト<ご報告1>として、小平 隆雄氏(田園調布学園大学)、小籔 基司氏(社会福祉法人若竹大寿会 横浜市すすき野地域ケアプラザ)に、シンポジスト(ご報告2>として、渡辺 裕一会員(武蔵野大学)、野嶋 成美(社会福祉法人台東区社会福祉事業団)にご登壇いただけました。
また、自由研究発表では3名の会員の方々よりご報告いただき、活発な議論が行われました。
情報交換会は「シャーロックホームズ」で開催されました。ホームズファンの店主が英国から直接買い付けた家具が並びイングリッシュパブの雰囲気が漂う店で、シンポジウムへの感想から始まり、さまざまな社会福祉教育談義が交わされました。
大会期間中、多くの方々が足を運んでくださいました。ご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました!
【大会1日目(9月7日)プログラム: 学園都市センター オクトーレ 12 階】
13:00~13:15 | 開会式 |
13:15~14:50 | 基調講演 「SDGsの実現に必要な社会福祉教育とは~環境福祉学の視点から~」 講師:炭谷 茂 氏(恩賜財団済生会 理事長) |
14:50~15:00 | 休憩 |
15:00~16:40 | 開催校企画ワークショップ 「地域課題解決型の教育活動の八王子における取り組み~循環する地域参加と学び~」 シンポジスト: 伊藤 貴雄(創価大学文学部人間学科 教授) 野村 佐智代(創価大学経営学部 教授) 丸田 晋策(創価大学理工学部共生創造理工学科 教授 創価大学大学院理工学研究科 生命理学専攻 教授) コーディネーター: 西川 ハンナ(創価大学文学部人間学科 准教授) |
17:00〜17:30 | 休憩・移動 |
17:30〜19:30 | 情報交換会 |
【大会2日目(9月8日)プログラム: 創価大学 中央教育棟】
10:00~12:00 | 学会企画シンポジウム 「メゾ及びマクロ・レベルの力量を身につけるための循環型教育〜ソーシャルワーク実習における学校と実習先の協働に焦点を当てて〜」 シンポジスト<報告1> 小平 隆雄(田園調布学園大学人間福祉学部共生社会学科 准教授) 小籔 基司(社会福祉法人若竹大寿会 横浜市すすき野地域ケアプラザ 所長) 「(神奈川)田園調布学園大学と実習先の取り組みについて ~地域アセスメントを通した実践的実習プログラム~」 シンポジスト<報告2> 渡辺 裕一(武蔵野大学人間科学部社会福祉学科 教授・実習委員会委員長) 野嶋 成美(社会福祉法人台東区社会福祉事業団 総務課 竜泉福祉センター開設準備担当) 「(東京)武蔵野大学と実習先の取り組みについて 〜実習前の準備に焦点を当てて〜」 モデレーター:小山 隆(同志社大学社会学部部社会福祉学科 教授) コーディネーター:Virág Viktor(ヴィラーグ ヴィクトル) (日本社会事業大学社会福祉学部 福祉計画学科 准教授・学科長) |
12:30〜12:40 | 休憩 |
12:40〜13:15 | 日本社会福祉教育学会総会 |
13:15〜14:00 | 昼食休憩 |
14:00〜14:25 | 新カリキュラム2箇所実習に関する情報交換会 地域活動情報展示 |
14:25~15:25 | 自由研究報告 竹森 美穂(関西学院大学) 「ソーシャルワーカーが実践研究・報告に取り組むプロセス〜社会福祉士へのインタビュー調査を通じて〜」 御供 后衣(東京福祉大学大学院社会福祉学研究科) 「高校生世代に関する児童館の役割について〜これまでの先行研究と既存の調査報告資料から〜」 板垣 直子(新潟医療福祉大学 心理・福祉学部 社会福祉学科) 「社会福祉士国家試験新出題基準を踏まえた授業や国家試験対策のあり方について〜新カリキュラムスタートから4年が経過して〜」 |
※新カリキュラム2か所実習に関する情報交換会と地域活動情報展示 (10:00~ AE256教室 ポスター展示)
【参加者の声】
田中 勝(愛知淑徳大学)
今年度、本学会に入会し、初めて大会に参加しました。
1日目の基調講演者・炭谷茂先生は、厚生労働省社会・援護局長時代に示された『社会的な援護を要する人々に対する社会福祉の あり方に関する検討会」報告書』を主導された方であり、その後の生活困窮者自立支援への道を開き、さらにはソーシャルファームを推進する先駆者です。その住谷先生が社会福祉教育を語るとのことだったので、大きな関心を持って参加しました。
この基調講演では、まずSDGsを正しく理解するためには、その歴史を学ぶ必要がある。その中心は、人権問題であり、途上国の貧困や健康の問題、先進国の新しい貧困、さらに人類滅亡にもつながる環境問題として理解しなければならない。しかし、日本では、こうした歴史的な理解なく、見かけだけのSDGsを進める企業がまだまだ多いと述べられました。
次に、SDGsを取り込んだ社会福祉教育を進めるためには、高齢者、ひとり親家庭、障害者、引きこもりの人など貧困問題、さらに既存の福祉制度の外側にある問題に目を向ける必要がある。そして、まずは実践すること、その実践にあたっては「交差性」、「複合性」に関する理解が極めて重要であると述べられました。つまり、福祉問題は狭く捉えるのではなく、環境、産業、教育など様々な問題と連関性を持つ視点が求められているのである。
こうした理解の上で、炭谷先生が提唱する環境福祉学では、水俣病の例、途上国の例を挙げながら、環境問題と貧困問題とは深く関係している。そのため、どちらか一方でなく両者を一緒に考えなければならないと力説されました。
さらに、現在理事長をされている済生会が、SDGsの「誰一人取り残さない」と重なるソーシャルインクルージョンの理念に立って、社会に取り残されがちな人々に着目し、かつ、公的な支援を受けず様々な団体等の協力し推進している複数の事例が紹介されました。
炭谷先生の話の詳細をこの紙面では語り尽くせませんが、社会福祉教育に従事する者として、将来を担う福祉人材に伝えなければならないエッセンスが数多くありました。これらを咀嚼し、今後の教育実践に活かしていかなければならないという想いを強くしました。
2日目の学会企画シンポジウムでは、田園調布学園大学、武蔵野大学の教員と実習施設の実習指導担当職員によって、ソーシャルワーク実習における学校と実習施設の協働の取組の紹介がなされました。普段はなかなか知ることのできない他校の実習教育の実践は、私自身の研究テーマとも重なり、とても示唆深いものでした。
なお、新参者には場違いかと思いつつ情報交換会にも参加しましたが、快く受け入れていただき、楽しい時間も過ごさせていただいたことも、合わせて報告致します。
【参加者の声】
板垣 直子(新潟医療福祉大学)
今年度正会員となり、第20回大会に参加し自由研究発表をさせていただきました。正会員となったのは今年度ですが、正会員となる前、2017年3月には「社会福祉士養成カリキュラムの見直しに向けた取り組み」をテーマとした研修会、2018年3月には「共創する人材をどう育てるか-東北公益文科大学の取り組みから-」をテーマとした講演、“えんたくん”を取り入れてのワールド・カフェスタイルの「共創の技法ワークショップ」が行われた「第8回春季研究集会」に参加いたしました。本学会での集会は、私にとって大変貴重な体験であり有意義であったため、いずれは正会員になりたいと考えておりました。専門学校の専任教員から大学教員となり、研究職として本格的に歩み始めたことを機に、正会員として入会させていただきました。
コーディネーター:Virág Viktor(ヴィラーグ ヴィクトル)会員(日本社会事業大学)
今回、私の大会参加は、コロナ禍を経て6年ぶりとなりました。初めての八王子市を訪問させていただきましたが、若い生徒・学生が多く教育水準の高さを感じると共に、町の活気と勢いを感じ、駅を降り立った時は大変心が躍りました。
初日の炭谷先生の「SDGsの実現に必要な社会福祉教育とは-環境福祉学の視点から-」というテーマでの基調講演では、SDGsの精神に則った済生会での取り組み、地域創生に繋がる企業との連携等の貴重な講話を通して、社会貢献を想像にとどまらずに実践する大切さを学ばせていただきました。2日目の学会企画は、「メゾ及びマクロ・レベルの力量を身につけるための循環型教育〜ソーシャルワーク実習における学校と実習先の協働に焦点を当てて〜」というテーマでのシンポジウムでは、大学と実習機関が一体となったソーシャルワーク実習の実践報告を通して、私自身が目指したい社会福祉士養成教育のあり方を学ばせていただきました。自由研究発表では、社会福祉士国家試験新出題基準を踏まえた授業や国家試験対策のあり方について〜新カリキュラムスタートから4年が経過して〜というタイトルで発表させていただきましたが、参加の皆様より旧カリキュラムと新カリキュラムを比較検討する研究視点のご指導を頂戴し、本研究においての次の着目点を得ることができました。
現在、私は後期博士課程において、基礎教育の保障と地域定着要因について研究することを目標としております。この研究が、私の生涯の研究テーマである質の高い社会福祉専門職養成教育に繋げられるようにしたいと考えております。次回の本学会では、現在の研究テーマを発表できるように日々自己研鑽に励みたいと思います。また、皆様にお会いできることを楽しみにしております。今度は誠にありがとうございました。