日本社会福祉教育学会 NEWS LETTER No.46

巻頭言

学会の存在意義

日本社会福祉教育学会 副会長 小山 隆(同志社大学)

副会長 小山隆会員
(同志社大学)

 我々の多くは複数の学会に所属します。それぞれの目的や研究領域、アプローチなどに「違い」があるからこそ、複数の学会に所属するわけです。しかし、各学会は完全に排他的かというと、相当程度の重なりがあることも事実です。だからこそ、どの学会に所属するかの選択に悩むことにもなります。特に近年、福祉系関連学会の数が増え選択肢が増える一方で、若手研究者の初期キャリアの多くが有期雇用形態になる現実から、数多くの学会に入ることを(経済的にも)躊躇わせる状況が出てきています。さらにいえば、高度情報社会の進展により「学会」の持つ知識の受・発信の場、蓄積の場としての独占的役割も大幅に減じてきています。わざわざ学会にまで出向かなくてもインターネット上で多くの知識が手に入る時代になっているのです。

 実際、福祉関連学会に限らず多くの学会が会員数の減少に悩んでいます。このような中、本学会もその存在意義を自ら再確認し世に問うていく必要があるでしょう。この作業は、会長以下理事会が率先して行うべきことでもありますが、学会員一人一人が学会という「共同体」の主体的構成員として自ら行っていきたいテーマであります。知識の消費者・利用者としての我々にとって学会の意義は少しずつ薄れてきているかもしれませんが、「生産の場」、交流による「鍛えの場」としての側面はやはり大きいと考えられるからです。

 ここで、具体的なことを述べることはできませんが、例えば、1.原点に戻る 2.特徴を生かす といった切り口で現状を評価し守ること、見直していくことの確認もできるのではないでしょうか。

 ◎原点に戻る 本学会の『ニュースレター第1号』の巻頭言では、「社会福祉専門教育に焦点を絞って、体系的に社会福祉教育について討議・研究する適切な場があるとはいえず、社会福祉専門教育を中心とする新たな学会の設立は急務の一つであった」と述べています。このことは絶えず確認しておきたいよりどころでしょう。

 例えば、社会福祉士実習時間の増加に伴って、各学校がどのようなポリシーに基づき工夫をしているかということを、本学会では「年次大会」、「研究集会」で現在も、継続的に共有しています。また過去には力及ばずの結果になりましたが、厚生労働省のカリキュラム改正にあたって学会として提言しようという心意気で科目のシラバスについての検討をワークショップ形式でしたこともありました。

 このような、社会福祉士養成にしっかりと焦点を当てた討議・研究は今後とも続けるとともに、「社会福祉専門教育」の幅を「士」養成を超えた「ソーシャルワーカー」養成へと拡大していくことも必要でしょう。国際実習等、「士」養成を超えた実習教育、さらには大学院教育等も今後話題にできればと思います。

 ◎学会の特性を生かす ソーシャルワーカー養成を中心とした社会福祉教育という具体的テーマに関心をもつ仲間が集まっていることは本学会の大きな魅力です。そして、比較的小規模な学会であることもリンクして強みとすることができるのではないでしょうか。

 実習時間増への各養成校の対応についての共有もそうですし、各科目のシラバスについての共有や磨きあい等、問題意識を共有する少人数の仲間であるからこそできることは多いと思います。講義形式の学びでない、その場にいるメンバーが全員参加するワークショップ型の知の生産の場は本学会の特性を生かして形といえるのではないでしょうか。

 消費者でなく生産者、共同者としての会員の皆さんの提案、参加をお待ちします。

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