2022年1月7日 発行
巻頭言
コロナ禍を経て学びの蓄積を
世界の状況を見た時まだまた予断を許さないものの、コロナ感染状況は日本においてやや落ち着いてきたようにも見える。(もちろん将来についてまだまだ余談は許さないが。)振り返れば、筆者の勤める大学でも 2020 年度の春学期は完全に対面授業が中止され、少人数のゼミさえもオンラインを余儀なくされた。さらには大学の敷地内に入構するにも学生証と記名が必要となる時期があった。その後原則対面授業の基本方針が打ち出され可能な限りその実現が目指されているが、現実には前列横列を開けるいわゆるコロナ定員(本来席数の 3 分の 1 )のため、約 1 00 名を超える授業はオンラインにせざるを得ない現実が 2 年目を終えようとしている現在も続いている。そのため大規模授業は軒並みオンライン講義となり、教養系の科目や法経商などの大規模学部への影響は大きい。また対応は大学において様々ではあるが「ソーシャルワーク実習」が実施できずにオンライン対応を行うこととなった例も見られる。
しかし、福祉教育にとって危機的とも言えるこの状況を「空白の2 年間」として総括するわけにはいかないだろう。すでに各所で総括は行われ始めているが(※)、本学会ではさらに一歩進めて「先駆的実践から学 ぶ」段階から、「メンバー一人一人が発信し」学びを集積していく作業へと歩を進めていきたいと思う。
ここでは、自らのオンライン講義体験を語ることで議論のきっかけとしての自己開示としたい。(※※)
従来、半年2 コマ連続 4 単位で実施している科目 本学で言うソーシャルワーク論Ⅰ である。履修者は 100 名前後である。
これをオンディマンドとリアルタイムに分割した。具体的には1 コマをオンディマンド講義(VIMEO を利用 として録画配信し、出席を兼ねたレスポンスシートの提出を 3 日以内に求めた。そして翌週 1 コマ枠をオンライ ンリアルタイム授業 (ZOOM を利用 にあて、録画への学生からのレスポンスに対する応答を 60 分おこなった。その上でブレークアウト機能を用いて 45 人のグループを作り、小山の発言への疑問や各グループで自由に話題を出し話し合い、さらに残された 15 分を全体クラスへのフィードバックの時間に充てた。
対面でも100 名クラスでのグループディスカッションは一部導入していたが、とても毎回は困難であった。また親しい者同士が固まりグループでの学びを深める作業は容易ではなかった。
それが録画の繰り返し視聴を可能にし、しかも異なるメンバーとのグループディスカッションを毎回保証することができたことは講師である筆者にとっては満足度の高いものであった。来年度に本来の対面講義に戻ったとき、どのような形でオンラインで確保できたメリットを維持できるか悩んでいるような状態である。
もちろん画面オフにする者が多く学生の反応がわかりにくい等欠点も多い。また授業後の質問の場といった非構造的な空間の作りにくさもある。
しかしそれでもコロナ期に得た経験・工夫を今後に生かしたいとも思うのである。
※例えば今年度の本学会年次大会のメインテーマは「社会福祉分野におけるICT 活用教育の課題と展望ウィズ/アフターコロナ時代の社会福祉教育を考える-」であった。
※※もちろんこのような整理はすでに各人各所で行われている。ただ今回の体験はおよそ福祉関係者、福祉教育関係者すべてがくぐり抜けている。その意味では過去の大震災などと比べても「経験者から学ぶ」姿勢よりは、自らが「発信者としてコミットしていく」ことが求められるだろう。
目次
- 巻頭言
- 第17回大会報告
- 総会
- 福祉実践報告
- お知らせ
- 編集後記