日本社会福祉教育学会 NEWS LETTER No.12

2012年1月31日発行

巻頭言

新年のご挨拶

2011年の日本や世界での様々な事象から考えることは、官僚も政治家も企業幹部も、(そして私たちも)いかに成り行き任せでその場しのぎの対応を繰り返してきたかということがはっきりしたということでしょう。そして、その結果が如何に重大な問題を後世に残すかということが明らかになったことだと思います。別な意味では、皆が(自己保身につながりやすい)自分の考えのみで、やるべきと考えた事(やりたい事)ばかりをしていて、今、何をしなければならないのか(何が必要とされているのか)を、問うて来なかった(問うてもやらなかった)結果がはっきり出たなと思います。

私個人としては、社会福祉業界も高等教育業界も、極端な少子化や学力低下(学習意欲の喪失)、クライエントへの共感が少ない社会福祉職員の出現などなど、様々な問題を引き起こしているにもかかわらず、極言すれば、その問題には直接的にはなるべく触れないようにしている現状もあり、これらの問題の枠外ではないと考えています。その意味では、改めて、社会福祉(専門職養成)教育のあり方について、基本から考えなおしていくことが必要ではないかと思います。

それらを考えた「福祉教育のヴィジョン」を、今こそ、創り直していくことが必要なのでしょうし、その根拠となるべき研究をしっかりと積み重ねることが、必要なのだろうと考えます。とかく、研究は狭い領域の、一般の人々から見れば極めて特殊な内容になりがちです。私たちも、福祉教育というかなり専門的な領域に関する研究を主な目的としています。しかし、同時に福祉教育はその背後に広がる福祉や教育の広いすそ野を持つ研究でもありますし、その裾野への配慮のない研究は、社会的な有効性を持ちにくいのではないかと考えます。色々な研究があり得るでしょうが、それらの研究自体が社会的行為である以上は、その研究が持つ社会的意義への配慮は欠かせないでしょう。

特に近年の福祉教育もその枠外ではない教育問題や福祉問題は、現代日本の社会的矛盾が集約しているとも言え、その意味で、社会福祉教育研究の内容と質が問われていると言えるでしょう。そして当然のことながら、「学会」も一つの社会的機関として、どう社会貢献をしていくのか、その内容と質もまた問われていると思います。

2012年が、その様な意味で新たな展開をはじめた年として、多くの人々に記憶されるようになる事を祈りつつ、また、会員の皆様のご健勝と発展を祈りつつ・・・。また、春季研究集会や大会でぜひお会いして、意見を戦わせる日を楽しみに・・・。

会長 川廷 宗之

目次

  • 巻頭言・新年を迎えて
  • 学会探訪~大学教育学会
  • 宿題研究「職業人養成教育としての実習教育の課題」の進捗状況
  • 第2回春季研究集会の開催について
  • 2012年度・第8回大会(第1報)
  • 新カリに関する意識調査の結果(第1報)
  • プロローグ・私の福祉教育
  • 『日本社会福祉教育学会誌』第6号の発刊並びに第7号への投稿募集
  • 編集後記

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